買収から10か月。今季リーグ6位と好調の地元クラブに、街は歓迎ムード
森保ジャパンに選出された遠藤航、冨安健洋をはじめ、関根貴大、小池裕太、鎌田大地と5人の日本人選手が在籍しているジュピラーリーグ(ベルギー1部)のシント=トロイデン(STVV)。1924年1月19日に創立され、ベルギーのサッカー界において90年以上の歴史を誇る、由緒あるクラブだ。
2017年6月、日本企業DMM.comはクラブ株式の20%を取得。11月には残りの80パーセントの株式を所得したと発表し、クラブの正式なオーナーとなった。元FC東京ゼネラルマネージャーの立石敬之氏がCEOに就任し、冬の移籍市場ではまず冨安を獲得。その後も続々と日本人選手が加入して今に至る。外国枠がないベルギーリーグとはいえ、日本人が海外クラブに同時に5人在籍するという状態は前代未聞だ。
今年の1月、立石敬之CEOに「シント=トロイデンの町を歩いていても、STVVのことを感じることが少ない」と話したことがあった。
STVVの練習場は中心街からほど近い場所にある。スタジアムは少し離れているが、それでも駅や中心街から徒歩圏内だ。せっかく、これだけ町とクラブが密接しているのだから、サッカーの熱を感じられないのはもったいないなと思っていた。
ところが、立石CEOは「いや、逆ですね」と私の意見を否定してから続けた。
「私は『この町のクラブはSTVVだな』というのを感じます。いや、もう、凄いですよ。『君が新しいCEOなの?』って必ず声をかけてもらいますし、質問もたくさん来ます。町ぐるみで応援してもらってます。だからもっと、スタジアムに足を運んでくださっても、良いんですけれどね」
この立石CEOの言葉が耳から離れなかった。あれから10か月。私は平日の昼間、シント=トロイデンの街を実際に歩いてみた。
すると、驚くことに「VOORUIT STVV(進めSTVV)」というコピーの入った、あの印象的なイエローのフラッグが、実に多くの店の軒先に飾られるようになっていたのだ。
私は先ず、女性向けの服屋に入り「この店はSTVVと何か関係があるんですか?」と訊いてみた。クリストルと名乗った店員は、にこやかにこう答えた。
つづく
10/21(日) 16:00 サッカーダイジェスト
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181021-00048904-sdigestw-socc
軒先にSTVVのフラッグを飾り、日本企業を歓迎する声が増えてきた
「私は試合がある日は、スタイエン(STVVのホームスタジアム)でビールを注ぐボランティアをしているの。日本人って、とてもフレンドリーだわね。ほら、クラブの首脳陣に髪の毛を後ろに束ねて、がっしりした体格の人がいるじゃない?」
私もその人物を知っていると伝えると、彼女は楽しそうに笑った。
「彼って本当に試合後、楽しくビールを飲むのよ。クラブはリーグ6位と調子が良いし、日本企業がマネージメントするようになって、本当に良かった」
続いて、フラッグを飾るチョコレート屋に入ってみた。母と娘が切り盛りする店だった。
「日本企業がSTVVを運営することは大歓迎よ。この子の息子が26歳なんだけど、日本に15日間、旅行に行っていたの。すっかり日本という国が好きになっちゃったみたい。その国の企業であるDMMは大歓迎だわ。試合は時々観に行くのよ」
だが、返ってくる答えは、ポジティブなものばかりだった。
「日本人がオーナーでも、STVVはSTVV」
「サッカーは結果が全て。DMMがオーナーになって、結果が出ている」
「あまりに前のオーナーが酷かったからね…」
そして皆、「DMMにはポジティブなイメージしか無い。彼らはクラブに投資してくれるだろう」と期待の声をあげるのだ。
現在、STVVには冨安健洋、遠藤航、鎌田大地、関根貴大、小池裕太と5人の日本人選手が所属している。
私は、スポーツ用品店でフランクと名乗る店員に「今のクラブは日本人選手が多すぎないか?」と訊いてみた。すると、「いいや」と彼は言った。
「サッカーというスポーツはとても国際的なスポーツになった。選手の国籍なんて関係ない。彼らが中国人でも、イタリア人でも、スペイン人でも、いい選手なら俺は応援する。